波浪予報システム


波浪予報数値モデル

岐阜大学の波浪予報に用いられている数値モデルは,オランダ・デルフト工科大学(Delft University of Technology)が開発した波浪推算モデルSWAN(Simulating Waves Nearshore)を元に,下記の理論に従い,最大波高も推定できるように改良したモデルです.
森信人,Peter A.E.M Janssen,川口浩二 (2008):多方向性を考慮した異常波浪予測モデルの提案とその検証,海岸工学論文集,第55巻,pp.111-115.
SWANは岐阜大学のみならず,現在世界中で広く使われている数値モデルです.


計算条件

1. 計算領域

計算領域は図のようにDomain 1からDomain 4までの4つの領域となっています. 広大なDomain 1から順番に計算することにより,東海地方沿岸の波浪予報の精度を向上させています.

2. 計算条件

領域 Domain 1 Domain 2 Domain 3 Domain 4
水平解像度 1°(約100km) 0.5°(約50km) 0.1°(約10km) 0.05°(約5km)
タイムステップ 30分 20分 10分 5分
予報時間 36時間
初期値 前日実施の本システム予報値
境界値 開境界 より大領域の計算結果
予報時間 36時間
海上風データ 気象庁GSMデータ(6時間間隔,1°格子)

波浪予報項目


有義波とは,人の目で海の波を見たときに感じる平均的な波です.
海の波は波高の大きい波や小さい波,波長の長い波や短い波など,様々な波が混在しています. そこでこの様な波の場を表す代表的な波として,目で見たときの感じに近い有義波を使うことが一般的です.
日本では通常,有義波として1/3最大波を用います. 海岸で観測される連続する多数の波を波高の大きい順に並べ,その上位1/3の波の波高や周期を平均した値が,有義波高(1/3最大波高)あるいは有義波周期(1/3最大波周期)と呼びます.
海の波には,この有義波より波高が大きい波も存在するので注意して下さい.


うねりとは,一般に遠方から伝わってきた,周期が長く,表面がなめらかな波です.
このホームページで扱っている海の波は風で起こる波を扱っています. 風が強く吹いている時には波の峰がとがった「風波」が起こり,波高は大きく,周期も長くなるように成長していきます. 風が弱くなったり,波が進んで風の弱い場所にたどり着いた場合には,波はそれ以上成長することはありません. このときの波は表面がなめらかで,周期の普通長い「うねり」になります.
はるか遠方の海に発生した台風からの伝わってくる「土用波」は代表的なうねりです.


最大波(1時間)とは,1時間のうちに来襲する最大の波です.
海の波は波高の大きな波や小さい波など,様々な波が混在しています. その中で,1時間波を連続して計測して,最も波高が大きかった波を最大波(1時間)と言います. ここでは下記の理論を使って統計的に最大波の波高を求めています.
森信人,Peter A.E.M Janssen,川口浩二 (2008):多方向性を考慮した異常波浪予測モデルの提案とその検証,海岸工学論文集,第55巻,pp.111-115.
この最大波高は統計的に求めているために,予報より大きな波が来襲することもありますので注意して下さい. また時間が長くなるとより大きな波が来襲する可能性が大きくなります.


海上風とは,海の上を吹く風です.
風の速度,風速は高さによって変化しており,海面近くでは遅く,上空に行くほど速くなります. 工学的には通常,海面から高度10mの高さでの風の風向・風速を扱います.
このホームーページで扱っている海上風も高度10mでの風です.


天文潮とは,月や太陽などの天体の運動によって発生する潮汐です.
潮汐は主に月や太陽の運動で発生します. 天文潮とはこの潮汐のことです.
高潮(たかしお)によって発生する潮位は異常潮位あるいは潮位偏差と呼ばれます.